教育のためのTOC

家族の悩みに、MQ会計とクラウドを使った話

相手が迷っていることに対して「○○したらいいんじゃないの?」と適当にアドバイスをしても、相手には響かなかったり、逆に混乱させてしまったり怒らせてしまったりすることがよくあります。

そんな自分に気づいたときこそ、今まで学んだことを何か役立てられないだろうかと思ってやってみました。
教育のためのTOC1 のツール(図)って、どんなときに使うの?と思っている方にも、「そんな感じで使っていいのね〜」というライトな事例として参考になると良いなと思います。

TL;DR

2つのフレームワーク
・MQ会計
・教育のためのTOC を使って、母の悩みを聞いた事例の紹介です。

この2つを使うことで、実際の数値(データ)と、話し手の思いや根拠(感情)の両方を訊いて建設的な話ができました。

またフレームワークを頼りにデータや図を使うことは、悩んでいる話し手の頭の中を整理するだけでなく、話を聞く側にとっても、何を質問すると相手をサポートできるのかの整理になります。

自分の反応的な行動を反省

お盆に帰省したとき、輪島朝市のオバアである母が、商品の値付けを迷っていました。

「個数もそんなにたくさんつくれない商品なのだから、どうせなら高い方をつけたらいいんじゃないの?」と言ってみたのですが…

それは結局他人事の視点からの根拠もない意見であり、また母としても「「安い」と「お客さんが喜ぶ」」と思っているようで、納得していませんでした。

とはいえ、実際に話を聞くと、
安い方の値段をつける理由はいくつも思い浮かんでも、高い方の値段をつける理由が出てこない様子です。

話を聞いて一緒に考えるために、やってみたこと

自分が適当にものを言ってしまったこと、母が珍しく悩んでいることを感じました。
そこで2つのことをやってみました。
・データて見てみる
・なぜ迷っているのか、なぜそれぞれの決定が良いと思っているのかを訊く

次から、具体的な話を書いていきます。

データを見る

データとは言えないほどシンプルな数式ですが、最近知ったMQ会計の中の式
P: 売価 ✕ Q: 在庫数=PQ: 売上高 を実際に計算してみました。

わたしの質問:
・商品数(在庫)はいくつあるの?
・いくらで売りたいと思っているの?

母の答え:
在庫は65個つくれそう。
単価は1,800円と1,500円で迷っている。

ということでした。
そうするとPQは以下。2

① P:1,800円×Q:65=11,7000円
② P:1,500円×Q:65=  97,500円

ここまできたときに初めて、母の考えを聞けました。
「わたし(この商品全数で)だいたい10万円くらいをもらいたいと思っとるのよね」

そんな目標を持っていたんだ!知らなかった。これはわたしの方の驚きでした。

そして同時に母は、うーむという表情をしていました。
おそらくベターだと思っていた②の売価では希望の売上高を達成できないと、現実的に理解したのでしょう。

MQ会計については、MG研修で学ぶことができます。
書籍ですとこちらがストーリー仕立てで基礎的な内容が書かれており、読みやすかったです。

本当の願い(要望)を訊く

次にそもそも2つの価格の間で迷っていたようなので、「教育のためのTOC」のクラウド(対立解消図)を書いてみました。

クラウドについては、以下の書籍で、利用シーンや作成プロセスの雰囲気をつかむことができます。

安い方の価格に対する母の望みは、ここまでの話ですでに判明していました。

  • 地元のお客さんをがっかりさせたくない、喜んでほしい。
  • なぜならば、安い方が地元価格としてお客さんが喜ぶから。

一方で高い価格の方の望みがよくわかりませんでした。

わたしの質問:
安値の方はわかったけど、高値の方の価格をつけたいとしたらそれはなんで?

母の答え:
1. 高い価格の方が、関連商品である一番商品3 の価格との釣り合いが取れる。(一番商品は高価な商品だ)

2. この商品をお客さんに見せることで、お店の一番商品の新鮮な原材料を、地元で&自分で、仕入・加工したという証になる(=この商品は、一番商品の原材料の副産物)
→だから、お店に並べてお客さんに見せたい。
→だから、安くして早く売る必要がない。さらに日持ちもするので、早く売れなくても大丈夫。

こうしたことを発散していくうちに、「早く売り切れない方がいい!」と母が叫びました。

こんなふうに、このクラウドをつくるプロセスの中で、母が「!」となったタイミングがあったのでしょう。

クラウドの図を完成させるという意味では、高い方の値段をつける「理由・願い」は、ひとつのドンピシャの言葉には詰めきれなかったけれど、それでも母の中で、値付けに対して母の腹が決まった瞬間でした(^^)

クラウドのような図は、本来は話し手と聞き手が一緒につくるといいのでしょうが、母にはそのようなエネルギーをかけたくありません。
そこで、聞き手のわたしが母の話を聞きながら勝手に脇で書いていました。

しかし図を書くことで、わたし自身が母にどう訊くと良いかがクリアになると感じました。
また、話の内容を書き留めておけば、議論の確認や後戻りもできます。
ですので、フレームワークの使い方としては十分だと感じました。

実際に書いたクラウド。上段真ん中の箱が詰めきれず

今回できたこと

今回できたことは、次の3つだったと思います。

  1. 相手の話を、理解しようと思って訊けた
  2. 事実(実際のデータ)と感情の両方を確認できた
  3. 相手が自分で結論を出すまで話せた(=聞き手が言わない)

相手の話を、理解しようと思って聞けた

「どうせ自分のことじゃないから」という感覚で話を聞くと、その態度が相手にも伝わります。

少し気を抜くと、無意識のうちに「どうせ自分のことじゃないから」という感覚で話を聞くことになります。それが相手に伝わるんですよね。

また、聞いているふうを装っていても、変にアドバイス的な発言をしてしまったりしがち。
自分の姿勢を反省し「母は何に悩んでいるんだろう?」と理解しようとする姿勢から、初めて対話ができ、今回のような良い結果につながったのではないかと思います。

事実と感情の両方を確認できた

今回は、MQ会計と、教育のためのTOCの手法を試しに使ってみました。
そうしたことで、母が気にしていた、(1)お金の話と、(2)お客さんとお店を大事にしたいという気持ち、の両方を話すことができたと思います。

どちらかに偏らず、どちらも確認できたことで、母も自分で納得できる考えに辿り着けたのかもしれません。

相手が自分で結論を出すまで話せた(=聞き手が言わない)

最初のわたしの態度はこれの真逆でした。
母が納得できず話をやめようとしたときに、自分の態度がよくなかったと気づきました。

そんな自分に気づいて、聞き方の方向転換をしてからは、質問ベースで話ができました。
母の商売についてわたしが詳しくなかったことも幸いしたと思います。

今回のようなフレームワークを頭に浮かべることで、自分のいいかげんな発言を押し付ける前に、立ち止まることができますね。

  1. ビジネス向けの制約理論を、シンプル化し教育に応用した思考プロセス手法の提唱。 https://tocforeducation.org/about/ []
  2. PQに着目するのはMQ会計の本筋の考え方とは違うのですが、他の前提はここでは企業秘密(笑)としたいので、あくまでPQで書いています。 []
  3. ここでは自信をもっておすすめできる、花形商品とします []
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